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 十年後。  内戦状態が続いたミャンガラマの危険情報がようやくレベル1に下がった。  私は約束を果たすため、クアラン州パウェンに戻った。在日大使館のツテを辿り、クアラン民族解放軍とようやくつなぎをとることができた。  パルジェを残して去ったあの場所は、アスファルトの広い道路と土産物屋が並ぶ賑やかな一画に変わっていた。その向こうに、スーパー<プラネタリー&アイ>も見える。 「だいぶ様変わりしましたね。あの頃は瓦礫の山だった」  僕はガイド役のピューウェイ女史に話しかけた。彼女はクアラン族解放軍(レジスタンス)の広報官だった。  彼女は刺すような眸を僕に向けた。 「パジェルは未処理の地雷を踏んで大怪我したことになっていますが、本当は<プラネタリーアイ>社の建設予定地を爆破しようとしたとか、しないとか。そんな噂がね、クアラン族の間に流れていた時期もあったんですよ。真実はどうなのでしょう? コ・大倉マクル?」 「彼は対話だけでは丸く収まらない、とよく言ってました。あなたもクアラン族がゆえに、差別と迫害を受けてきたのではないですか」 「たしかに。現在も解放軍は活動してますが、決してテロリストではない。国軍みたいに弱者を捕まえて拷問したり殺したりしません」 「本当のことを話します」  僕は空を見上げた。    
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