ずっと友達って言ったじゃない

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私はいつも一人だった。 家族はお母さんだけ。お父さんは、顔も知らない。 お母さんはお父さんのことをろくでなしとしか教えてくれない。 それどころか、お父さんのことを聞くとお母さんはすごく機嫌が悪くなって、あまりしつこく聞くとぶたれるのでいつの間にかお父さんのことは、我が家では禁句になった。 お母さんは朝早くから夜遅くまで働いていたので、私はいつも夕飯は一人で食べていた。寂しくないと言えば、嘘になるけど、人は慣れと諦めとで自分と折り合いをつけることを私は幼いころから学んだ。 そんな私に、ある転機が訪れた。 私が住むアパートの隣の一軒家に、とある家族が引っ越して来た。 私とは住む世界が違うと思った。 とても幸せそうな家族。 ご両親と、私と同じ年くらいの女の子。いつも小さなアパートの窓から覗いては、私がもしあの家族だったら幸せだっただろうと夢想した。 そんなある日、私が買い物をした帰りに、アパートの部屋は暑いので、公園で買った物を食べていると、その子は近付いてきた。 「こんにちは。ねえ、あなたあのアパートに住んでる子でしょう?」 そう話しかけられて、顔を上げると、満面の笑顔の彼女が居た。 「私ね、この前、隣の家に引っ越してきたの。ミワって言うの。よろしくね」 知ってる。いつも窓から見てたから。私は黙ってこくりと頷いた。 「ねえ、あなた、お名前は?」 「エリカ・・・」 「へぇー、エリカちゃんかあ。可愛い名前だね!」 可愛いのは名前だけ。あなたのほうが数十倍可愛いわ。 その言葉は飲み込んだ。
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