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太陽が世界を照りつけて、何日が経ったでしょうか。 少年はベッドの上に横たわっていました。 彼の世界は全てが歪んで、ぼやけて、はっきりと見えません。 全ての物が重なって見えるのです。 生まれた時からずっと、ぼんやりと見ているのです。 少年の腕や足は今にも壊れそうなくらい痛く、熱くてかないません。 毎日、天井を眺めているだけの生活です。 そんな毎日が嫌いになりました。けれど、世界を嫌う事はありませんでした。 少年は何もできないので、ただ横になって夢を見ているばかりでした。 楽しい夢ならまだ救いはあるのですが、彼が見ていたのは悪夢です。 毎日、毎日、救いを求めて眠ります。 辛くて、悲しくて、怖くて、赤くて、黒い世界をひたすらに見ていました。 永遠に終わらない夢をさまよい、現実でもそう変わらないことに気づくのです。 彼の体に詰め込まれているのはたくさんの病気。 神様はこの世界にあるありったけの病気を、箱に詰め込んで彼に送ったのです。 神様からの最低で最悪なプレゼント。受け取りたくもありませんでした。 けれど、彼は生れてきてしまいました。 あまりにも重すぎるギフトボックスを持って。 どうして生まれてきてしまったのか。パパとママが悲しんでいました。 少年も「どうして生まれてきたのだろう」と考えてはみたのですが、分かるはずもありませんでした。 病気は体の中で自由に暴れまわっていました。 もちろん、彼にはどうすることもできません。 毎日頭はずきずきと痛むし、腕や足は言う事を聞いてはくれません。 動かそうとすると鋭く痛んで、今にも壊れてしまいそうで。 うまく呼吸もできないし、息苦しくてたまりません。 どれだけ腕のいいお医者さんも彼を診察してから決まって言うのです。 「生きている方が奇跡だ」と。その言葉と同時にさじを投げました。 お薬も出してはくれるものの、効き目はありませんでした。 病気を治すはずのお薬でさえも、彼らは食らってしまうようなのです。 彼らは悪魔みたいに笑いながら、まるで高級レストランでディナーを食べているみたいに。おいしそうに、そして楽しそうに食べていました。 病気は治るどころか、かえって悪くなるばかりでした。 いつしか、彼の心は空っぽになりました。 病気に全てを任せることにしたのです。 何もしなくても、きっと殺してくれる。そう思ったのです。 もう全てがどうでもよくなってしまったのです。 体が思うように動かなくても、息苦しくても、世界がにじんでいても、すべてがぼやけていても、何とも思わなくなりました。 ただ、時間が過ぎていくだけです。 時計の2本の針の長さが一緒になったような気分になりました。 いえ、少年には実際にそう見えていたのです。 二本の針はぐるぐると規則正しく回るようにしか見えなかったのでした。
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