花火にのせて

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.  桜春祭のクライマックスでもある打ち上げ花火が夜空を華麗に舞い始めた。  観る側と打ち上げる側の様々な思いが夜空に舞う。  歓声と拍手が鳴り止まない。  ヒュー、という期待が籠もった音が夜空を駆けるとドォーンという音に歓喜が弾け飛ぶ花火は、休む間も無く、次々と春の夜空に花を開花させていた。 「うわぁ、きれい」  静風はじっと春子の右手を握りしめたまま、病室の窓越しから見える花火に目をキラキラさせていた。 「うん、ほんと見事ったい」  静風の説得に負けた春子はベッドの上で静風と同じように窓越しから花火を見ていた。  その頃、打ち上げ花火の上げ場では最後に打ち上げる桜花乱舞の支度に緊張感が走っていた。 「よしっ! 後は優介が点火するだけや」  親方の好晴は優介の緊張をほぐす為に、優介の背中を勢いよく叩いた。 「はい」  優介は深く息を肩で吸い込むと、着ている法被を脱いで、静風が刺繍を施した法被に着替え直した。 「桜花乱舞かぁ、見事やなぁ、ソヨちゃんかい?」 「はい」 「ユウちゃん! 似合ってるったい」  親方の好晴と花火職人に冷やかされる優介の顔は赤くなっていた。 「よしっ! 優介、いくぞ!」  親方の好晴が最後の指示を出した。 .
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