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ひとまず少し時間の余裕が出来たが、龍臣と合流する為、しばらくしたら出発するらしい。
「夜春さん、山神さんに会ったらすみませんでしたって謝っておいて欲しいの。私のワガママを聞いてくれたのに、こんなことになって……。すごく心配掛けたと思うから」
『そうだね。責任取って死ぬんじゃないかってくらいの勢いで電話が掛かってきたよ』
すぐ出発するとは言え、少しだけ時間がもらえた。積もる話もあるだろうしと、和の配慮から夜春と通話を続けていた。
「ほんと申し訳ないことしたなぁ。直接会った時、私からもちゃんと謝るよ」
『龍臣も唯月に会えたらすごく安心するだろうから。それがいいと思う。ひとまず今日は俺から言っておくよ』
「ありがとう。よろしく」
電話越しではあるが笑顔が浮かぶ。すると夜春がねぇと呼んだ。
『今は本部にいるって言ってたけど、本当に何ともないんだよね?』
「うん。何ともないよ」
『ギボシからも何もされてない?』
「大丈夫。何もされてないよ」
ナイフで脅されたけど、脅されただけで斬られた訳じゃない。だからもう一度大丈夫だよと伝えると、はぁー……と深い息が吐き出された。
『よかった……。本当によかった……』
声色で安心してもらえたことが分かった。龍臣だけではなく、夜春にも相当な心配を掛けたことに申し訳なくなる。
『あとさ……。龍臣から聞いたよ。本当は病院に行くことが目的じゃなくて、買いたい物があったって』
「あ……」
静かに切り出された話題に、つい黙ってしまった。
和に、夜春にさえ嘘を付いた。秘密にしていた。
私が急に捕まったことで、龍臣がその経緯を話すのは当然のことで。それでもバツが悪くて、謝ることしか出来なかった。
「……ごめんなさい」
『唯月のことだから何か訳はあったんだと思うけど。帰って来てからゆっくり聞かせて』
「うん。分かった」
内緒で薬を作ろうと思っていた。斑目先生から他言無用と言われていたから。
でもこんな結果になってしまって。龍臣を始めとする皆に迷惑と心配を掛けて。
せめて夜春にだけは本当のことを話そうと思った。
「夜春さん、あのね。今ひとつだけ、大事なことを話してもいい?」
『うん。どうしたの?』
電話で繋がっている今。先にちゃんと話しておかなきゃと思った。
私がずっと体調が悪かった理由。そして今の私の状況のことを――。
「私のお腹の中に、赤ちゃんがいるの」
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