1話 ー真紅の瞳と紫の瞳ー

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 友芽は大学で知り合い、付き合いとしては1年程になる。入学式で隣にいたのがきっかけで、学科も同じだったことから自然と仲良くなった。  とは言ってもそれは、愛姫のお陰であることが大きい。人見知りする私とは違って、フレンドリーで気さくな愛姫が声を掛けたことから、今の関係に繋がった。  暗めのグレーアッシュに染めた胸まである長い髪。いつもトレンドを取り入れた格好に、ネイルも定期的に変わるオシャレさん。  私だけなら話すことすらなかっただろうなと思うと、今でも苦笑が浮かぶ。  愛姫のヘアアレンジを受け、それを見守る友芽。そんな私達の光景は珍しくはないのかも知れないけど、ではどうして放課後に行われているのか?  講義はとうに終わったのだから、家に帰ってゆっくりすることも出来る。別に大学内ではなく、カフェに移動して行うことだって出来る。  答えは至って簡単。時間潰しをしているからで、その理由は現れた人物で分かる。  ガラッと勢いよく扉が開き、オレンジに近い明るい髪をしたひとりの男の子の姿が見えた。 「悪い、遅くなった」  急いで来たのか少し息が乱れていて、謝りながら中に入ってきた。 「別に遅くないわよ? 時間的に終わって5分も過ぎてないし」 「灯路(ひろ)ちゃん、いつも急いで来なくて大丈夫なんだよ?」  愛姫に賛同する形で言えば、灯路はにこっと笑う。 「唯月に早く会いたいからさ」  さらりと言った言葉に、友芽はうえーと顔を顰めた。 「て言うか、今日の髪型可愛くない!?」  ハッと気付いた灯路はすぐ傍まで駆け寄ってくる。マジマジと見つめて口を開いた。 「ヤバ、俺好み。二敷(にしき)ありがとう」 「あんたを喜ばせる為にしたんじゃないけどね」 「それでもいいんだよ。それにしても浴衣に似合いそうだよなぁ。よし、今年の夏祭りはこの髪型で行こう」  キランと目を光らせ真面目に言うものだから、ついくすっと笑ってしまった。 「じゃあそろそろ帰るか。二敷、ありがとうな」 「いーえ。また明日ね」 「おぅ」 「愛姫ちゃん、友芽ちゃんありがとう」  手を振って灯路と教室を出る。家に帰るべく校内を出て、駅へと向かった。
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