13 忍び寄る美優の影

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「眠れない…」  眠ろうとすると、美優に似たあの後ろ姿が、瞼の裏にチラついてしまう…。やっと眠れても今度は夢に美優が出てくる悪夢を見て魘され、飛び起きてしまう…そんなことが続いていた。  物凄く眠いのに眠れない…こんな夜は無性に猫のユズをモフりたくなる。  ユズは不思議な猫で尻尾を触っても嫌がらない。「仕方ないわねぇ…」という顔で、私が気が済むまで撫でさせてくれるのだ。  だから私は辛いことがあると、よくユズの尻尾を握ったまま寝ていた。右手で尻尾をモフり、顔をユズの背中に乗せ猫枕してもらうと、嫌なことを忘れてぐっすり眠れるのだ。 「はぁ~、ユズをモフモフしながら寝落ちしたい…」  トイレに起きた私が政宗さんの寝室の前を通りかかると、半開きのドアからベットの上で丸くなって眠っている猫のユズの姿が見えた。 「ちょこっとだけ…モフらせてもらおう」  私は政宗さんの寝室に吸い込まれるように入って行く。  政宗さんはベットの奥端のほうでぐっすりと熟睡していた。ベットの中央で丸くなって寝ていた猫のユズは、私に気づいてふりふりと尻尾を振る。  私は政宗さんのベットにもぞもそと上がり込むと、猫のユズをモフり始めた。少しだけユズを撫でたらすぐに、自分の部屋に戻るつもりで。 ◇◇◇  翌朝、目が覚めると、とても体が軽くスッキリしていた。  なんだろ?なんかいい夢みてぐっすり眠れた気がする。私はベットに横になったまま、ぼんやりしながら昨夜みた甘い夢を反芻する。  悪夢を見て魘されていたら、優しい手が伸びてきて頭を撫でてくれた。手を握ってくれて、おでこに頬にたくさんの温かいキスが降ってくる。大きな手が悪夢が打ち消すように薙ぎ払い、私は安心して眠りに落ちる、そんな夢だった。  寝ぼけまなこで、ん~!と寝返りを打った私はハッとした。すぐ隣、至近距離に政宗さんの顔が飛び込んできたからだ。 『あれ、もしかして私、自分の部屋に戻らずに寝落ちしたの!?』  自分が政宗さんのベットで眠ってしまったことに気づき、動揺し赤面する私。  政宗さんを見ると、猫のユズと一緒にぐっすりと熟睡しているようだった。私は起こさないように静かにベットから降り、慌てて政宗さんの寝室を後にした。 「ふぅ~セーフ!、よかった政宗さんが目を覚ます前に起きれて」  廊下に脱出した私は、ホッと胸をなで下ろす。 ◇◇◇  それは平日の水曜日の午前中のことだった。  私が庭の手入れをしていると、家を窺うようにウロウロする日傘の女性を再び見かけたのだ。 「うちに何かご用ですか?」  私は勇気を振り絞り、女性の後ろ姿に恐る恐る声をかけた。  日傘の女性がゆっくりと振り返ると、栗色のゆるふわパーマな髪がふわりと揺れる。  女性の姿を見た私は、物凄く驚いてしまい言葉が出てこなかった!?。
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