プロローグ

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プロローグ

先輩は完全に酔っている。多分、明日になったら覚えていないのだろうな。そんなに親しくもないわたしにこんなに開けっぴろげなセリフを叫びまくるなんて。 寿退職(死語?)する先輩の送別会で、酒豪と名高い先輩は勧められるまま飲みまくり、完全に出来上がってしまっていた。誰も2次会に行こうと言わないまま解散となり、先輩は余計に荒れた感じだった。同じ方向というだけでわたしが連れて帰ることになった。同じ方向だけど、わたしの方が近くて、先輩の家はわたしの家からかなり遠いのだけれど。完全に酔ってタクシーの中で叫びまくる先輩を置いて先に降りるわけにもいかず送り届けることにした。 「処女のまま結婚したくな〜〜〜い!」「恋愛したかった〜!!」と叫び続ける先輩。若い運転手はニヤニヤと苦笑いしていてわたしは閉口した。 30歳までに結婚したかった先輩はお見合いしたそうだ。たいして魅力も感じない男と無難というだけで決めてしまったと。仕事バリバリやって男まさりで豪快な先輩がなぜそんなに結婚に囚われてしまったのか理解に苦しむ。 矛先はわたしに向いてきた。 「彼氏いるのよね?恋愛してるのよね?なんで?なんで?」が加わり、「処女のまま結婚したくな〜〜〜い!」「恋愛したかった〜!!」のループが続く。 大きな花束をふたつも抱えた先輩をやっとのことで降ろし、家の前まで連れて行ってからタクシーに戻った。運転手はニヤニヤ笑いながら「大変ですね。」と言った。頷きながら自宅を告げた。 帰りは、いろいろと考えてしまった。わたしは多分今付き合っている人とは結婚しない。彼は結婚を匂わせることもあるけれど、わたしが気づかないフリをしていることに気づいていると思う。結婚はしたい、でもこの人じゃないという思いしかない。じゃあどうすればいい?別れる?
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