雨上がりの、濡れたキミ

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 最後の段ボール箱に布テープで封をし、首にかけたタオルで汗を拭って窓の外を見ると、青い空にもくもくと入道雲が湧き上がり、その底の方が黒くなり始めていた。夕立になるのかもしれない。  律は段ボール箱を積んだワンルームの入口そばの一角に封をした最後の箱を持って行き、積み上げた。元々家具と言えるようなものを置いていないがらんとした部屋だったから、引っ越しと言っても大して準備が必要という訳では無かった。大きなものはローテーブルと本棚、ソファベッドぐらいのものだ。食器は大屋さんに引き取ってもらった。リサイクルショップに出すと言っていた。  千夏と喧嘩のような形で別れたままなのが心残りと言えばそうだったが、それももう終わった事だ。実家へ戻る事は律自身、最後まで悩んだ事だったし、それをまだ就職したての千夏に分かってくれとも言えなかった。
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