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◆◆◆◆◆ ベッドに押し倒されると、窓からの明かりがやっと久次の顔を映した。 今日は整髪料で固めていないのか、いつもより幼い顔をしている。 前髪が額にかかって、女子たちが騒ぐのもわかるような気がした。 「どうしよう……。すげえかっこいい……」 思わず呟くと、久次は鼻で笑った。 「よく言うよ。さんざん地味だとかナメクジとか、陰キャ先生とか呼んできたくせに……」 「それは―――照れ隠しだって……!」 「はいはい。そういうことにしといてやるよ」 久次の手が優しく漣の頭を撫でる。 手櫛でとかすように、優しく髪の毛を弄る久次に、溜まらなく切ない気持ちになる。 「先生……」 言いながら久次のワイシャツの胸あたりを握る。 「―――ん?」 久次がとても声帯が潰れているとは思えない美声を発した。 「巻き込んでない?」 「何?」 「俺のことがなかったら、退職なんてしてなかったんじゃないの?」 言うと久次は鼻で笑った。 「―――かもな」 「―――だったら……」 「でも―――」 もう一度漣の髪の毛を撫でながら久次は微笑んだ。 「もし時間を戻せたとして。もしあの西日が差すアトリエに戻ったとして。 それでも俺は、お前を叱ったよ」 「――――」 「何度でも何度でも。お前をあの地獄から救い出そうと努力したと思う」 久次はふっと笑った。 「つまりは、俺が好きでやってるってことだ。気にすんな」 久次は優しく微笑むと、漣の唇に自分の唇を落とした。
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