喰うもの

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「思ってたの。お札に効果があるなら、同じお札を持つ人間を恨むだろうなって。お前が何かしたのかって疑うよね。  それで、このお札の効果が無くなったらどうすると思う?」  ついに真っ二つに切られたお札を両手に持ち、星野さんは僕に笑いかけた。  ガクガクと全身が震える。ようやく星野さんが言っていた『いい考え』がこれなんだと気がついた。 「相当怒ってるなら私にくっついてくるかも」 「何して……し、死にたいの?」 「私守護霊強いんでしょう? もし私に憑いたなら、あの子病院から離れるかも」  星野さんはそう話しながら、切られたお札を近くのゴミ箱に捨てた。空き缶を捨てるかのような手つきだった。  喉も唇もカラカラになる。目の前が真っ暗になったようになる。絶望って、こういうことを言うんだと思い知った。確かに住職は守護霊が強いと言ったが、それは普通の霊相手のことなのに。視えない星野さんに、この少女の異様さは分からないんだ。  そして次の瞬間、星野さんの背後に何かがしがみついているのに気がつく。いつ来たのか気が付かなかった。小さな手が星野さんの首を絞めるように力強く回されていた。
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