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お風呂上がり、まだ水気を帯びている髪を首から掛けたタオルで拭きながら冷蔵庫の扉に手を伸ばした。
扉を開けた先には缶ビールが2本とレモン味の酎ハイが1本。
「ねえ、今日飲むの?」
冷蔵庫の中身を確認しながら部屋の奥へと声を投げかけた。数分待ったけれど返答はなく、今度はそちらに視線を移してみる。
私がシャワーを浴びている間に寝てしまったのかと思ったけれど、その予想に反してソファに腰掛けるそいつはどうやら起きている様子だった。
ひたひた、とフローリングの上を裸足で歩きながらソファまで距離を詰める。
目の前の男の視線は垂れ流し状態になっているテレビの液晶に向けられたまま。すぐそこまで来ている私の存在にも気づいていないようだった。
テレビから流れているのはニュース番組。
一応言っておくけれど、漫画やアニメにしか興味がないこの男がニュースに食いつくわけがない。
つまりこれはテレビに夢中で私に気づいてないんじゃなくて、ただ上の空なだけ。
もしくは、わざと気付かないふりをしているか。
せいぜいその二択だろう。
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