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……あ、落ちた
「ぼく、みぃちゃんのおむかえがくるまでかえらない。」
背の高いオレの顔を見上げ、オレの目をしっかりと見据える甥っ子の隆。
とてつもなく真剣な目に面くらい、「……は?」なんて間の抜けた声を出してしまう。
「みぃちゃんがかえるまでいっしょにいる。」
それだけ言うと、隆は教室の中へ駆け戻っていく。
オレと同じ色素の薄い薄茶の頭は、ツインテールの女の子のところへ。
「えっと……」
どういうことだ?
帰りたくないのか?
……いや、みぃちゃんとやらの迎えが来るまでと言っていた。
家に帰りたくない訳ではないのだろう。
あのツインテールの女の子がみぃちゃんとやらか?
……なんでまた急に……
引きずって無理矢理連れて帰ってもいいが……
少しくらいなら待っても別に……
保育園の教室の入り口で立ったまま思案していると、くすっと笑う声が耳に入った。
そちらに目を向けると、子供がいかにも好きそうな、かわいい猫のエプロンをした保育士さん。
隆がいつもお世話になっている先生だ。
「今日はたっくんが待つって言うのね。」
そう口にし、クスクスと柔らかく笑っている。
「…今日は?」
どういうことだ?
『今日は』と言うことは、いつもは違う誰かが待つと言っている……ということだよな?
オレの疑問は顔に出ていたようで、先生はあたたかな目を隆と一緒に遊んているツインテールの女の子へ。
「あの女の子、伊藤未来ちゃんっていいましてね、あの子がみぃちゃんです。」
やはりあの子がみぃちゃんで正解だったようだ。
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