5人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
➀トム・ピリビ
今年は例年よりもかなり早い桜の開花となった。3月10日で満開。ちょっと異常じゃないかな? 地球温暖化の影響だとニュースキャスターが言っていたのを思い出す。
この日の昼休み、上機嫌のわたしは公園のベンチで昼食をとっていた。午前中に訪問した企業さんから新たな契約を取るができたのだ。鞄の中にはその際に交わした契約書が入っている。
電話で会社に報告したら、尊敬している桃原課長が「お手柄だ。ご苦労さん」と言って喜んでくれた。
そぐそこのドラッグストアで買ったサンドイッチを頬ばりながら、桜を見上げる。
雲一つない水色に桃色が映え、思わず独り微笑んでしまう。
風が気持ちいい。
深呼吸なんかしてみちゃったりする。
少し前まで遊んでいた何組かの親子連れは、どこかに行ってしまった。食事のために家に帰ったのだろうと思いの片隅で処理する。
今、幾つもある公園のベンチに座っているのは、わたしの他には男性が一人だけ。その人は白衣を着ているので、ドラッグストアの薬剤師さんかもしれないな、などと軽く想像。
ペットボトルのコーヒーをゆっくりと飲みながら、ぼぅ……と、ただただ、桜を見上げているわたしの後ろから、突然、かささッと音がした。
反応して振り返った瞬間、ベンチに置いていた鞄をかっさらわれた!
「あッ!!」声を出して立ち上がる!
最初のコメントを投稿しよう!