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【1】
「遼太郎、夏休みだから暇あるでしょ?」
「……まあ授業ないし、サークルとバイトだけだからあるっちゃある、けど?」
晩飯の最中、向かい合って食べてた母さんに唐突に訊かれて俺は当たり障りのない答えを返した。
下手に「暇だ」って言い切ると何させられるかわからん、っても母さんは特に無茶言う人じゃないんだけどさ。
「さっき買い忘れあってスーパー行ったとき、ちょうど帰って来た小松原さんの奥さんに会って少し話したのよ。旦那さん、三日ほど前に会社で階段から落ちて足首捻挫したんですって! 結構酷いらしくて、ギプスして松葉杖だそうよ」
「え、大変じゃん! ギプスってこの暑いのに、って冬ならいいってわけじゃないけど」
小松原さんはマンションのお隣さんだ。ご夫婦と一人娘の愛の三人家族。小学三年の愛と大学一年の俺とはちょうど十歳違いになる。
愛が生まれる前からの隣同士だし、わりと家族ぐるみの付き合いもしてた。
俺も一人っ子だから、赤ちゃんの時から見てる愛は年の離れた妹みたいなもんかな。
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