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「おいコラァ…これは一体なんだァ…?」
「お、落ち着けよ拓徒……元ヤン要素出てるぜ…?」
鬼のような形相をする黒髪の少年は、右手に持ったしわくちゃの体操服を正面に座る少年の鼻先に突き付けて言う。
「話逸らすんじゃねえよテメェ……なんで昨日着た体操服が教室に残ってやがんだぁ…!?」
「いっいや、汗あんまかいてねーし、明日もあるから持って帰るのめんどくさいからさ…」
「ざッけんなこの野郎!!テメェが洗うわけでもねえのに偉そうに言ってんじゃねえ!!」
「ひぇっ!?」
「洗うのはお前の母ちゃんだろ!汗かいてねえと思ってても人間少なからずかいてるモンなんだ!そんな服放置してたら臭うし汗の黄ばみも出てくるんだよ!!そうだろ!?ええッ!!?」
「……そ、そうです…」
「それに汗や土で汚れてんのにくしゃくしゃにしてたら余計染み込んで汚れが落ちなくなるんだぞ!染み抜きなんて余計な手間かけさせてんじゃねえ!!」
「で……でも、最近の洗濯機は優秀だし、ちょっとくらいの染みた汚れくらい簡単に…」
「そういうこと言ってんじゃねえよゴルァッ…!息子が着る服はいつでも綺麗で清潔にしたいっつー母ちゃんの思いを踏みにじんのかァ…?そもそもテメェが洗ってるわけじゃねえくせに、何ほざいてやがる!!」
「ひぃぃっ!!わかったわかったわかりましたぁ!持って帰ります洗います!!」
「わかったならいい。洗ってくれる母ちゃんに感謝しろよな」
「は~い……」
半泣きになりながら拓徒から体操服を受け取り畳み始めるのは拓徒の友人の一人、三島勇雅。拓徒とは高校からの付き合いだが気が合って以来よく一緒に行動するようになった。
だから勇雅はよく目にする。拓徒の異常すぎる拘りを。
「お前今日掃除当番だったよな?これ使えよ」
「なんだこれ?」
「俺が作った埃取りだよ。折り畳み式でコンパクトだし細いから狭い場所も簡単に拭き取れる」
「………」
「じゃ、俺は先に帰るから。タイムセールが待ってるからな」
「お、おう…………ったく、男のくせにホント女子力高いよなぁ、ほとんどオカンだけど」
「誰がオカンだ」
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