プロローグ

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プロローグ

兄が二年間の遠距離恋愛の末、赴任先のベトナムから帰国後結婚した。 頭の良い兄は国立大卒で大手企業へ就職、どうやら出世コースに乗っているらしい。お嫁さんは兄と同じ会社で高嶺の花だと言われている方。兄よりも年上だけど、年齢なんて感じさせないくらいに綺麗でしかも可愛らしさも備えているという、女の私から見ても嫉妬するほど良い女性。 さて、一方の私はというと。 大野なぎさ、二十五歳。 普通の大学を出て、コミュ力と運だけで大手企業に就職できた幸運の持ち主。 でもきっとそこで運を使い果たしたのかもしれない。恋愛もコミュ力だけで学生のときから彼氏が途切れたことはないけれど、なぜか毎回フラれる方なんだから。 それだけならまだいい。 今回は結婚の話まで進んで両家の顔合わせのため食事会を開いたのに、まさかまさかの相手来ず……。 「……嘘でしょ?」 思わず口から言葉が漏れる。 何度電話しても繋がらないし、まさか事故にでもあったんじゃないかと悪いことが頭をよぎったその時。 突然ピロンと携帯にメッセージが一通。 【他に好きな人がいるから結婚できない。別れよう】 メッセージを目にした瞬間、まるで時間が止まったかのように空気が固まった。
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