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放課後の校舎はたくさんの声や足音が響いている。
急ぎ下校する者もいれば廊下に集まって他愛ないおしゃべりに勤しむ者、部活動や委員会活動に精を出す者と様々だ。そんな様子を眺めながら、梶は3本の足を引きずっていく。
じりじりと照り付ける陽の光が校庭に降り注いだ。地面から上がる熱気に、汗が吹き出しそうになる。戦慄く蝉の鳴き声が、その暑さを助長させた。
2年3組の教室は無人で、空いた窓にかけられたカーテンがもの寂しく揺れている。慣れない三足歩行をして教室の窓辺に近寄ると、そこにもたれかかるようにして梶は外を眺めた。
校庭のレーンを走る友人を幾度も見送りながら、自分がどうしてあの場にいないのだろうかと、それだけをただ思う。
もうすぐ執り行われる陸上競技大会。その短距離走の選手として、梶は選ばれていた。
主に3年生で構成されるメンバーに、2年生が選ばれることは早々ない。
それでも梶が選ばれたのは、中学での短距離選手としての活躍が凄まじかったからだ。
その実力を認められ推薦された梶は、学力こそそこそこに、この高校に入学が許された。
そして昨年1年生のうちから選手として選抜され、今年もまた選ばれるはず、だった。
顧問の西岡に呼ばれ集められた陸上部員は、今か今かと発表される選抜選手に自分がいるかどうか、と浮足立っていた。
梶もまたそうだった。例年通りであれば。
発表当日に、梶は通学途中で交通事故にあった。前方不注意運転をしていた車が路肩に突っ込んで、ちょうどその場を自転車で走行していた梶は、避けるためにハンドルを切るも衝突は免れなかった。
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