1円だけの価値

「あなたには1円の価値しかないですね」
ある道を通っていたとき、見知らぬ人から突然そんなことを言われた。
「誰だよあんた、それよりも1円しかないってどういうこと？」
「そのままの意味です。1円の価値しかない。いや言い直すとギリギリ1円ですかね？」
「おい、人を勝手にお金扱いするな。そんなのお前が勝手に決めたことだろ？」
「いえこれは私だけが決めたことではありません。お金で表現したのは、そうしたほうがあなた方にわかりやすいと思ったからですよ」
「……なんなんだあんた、いきなり人をお金で呼ぶわ意味分からないこと言うわ。頭おかしいんじゃないのか？」
「おかしいのはあなた方だと思いますがね」
「もういいわ、あんたの妄想にこれ以上付き合うつもりはない。警察呼ばないだけありがたいと思えよ」
「おや帰るのですか。それでは最後に1つだけ言わせてください。あなたもうすぐここからいなくなりますよ」
「はあ、そうするつもりですよ。……ってあれ、いない？」