三途の川も

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その中坊もどきは、そう言うと青ざめて、何かの台帳を急に焦ってペラペラとめくりはじめた。 「あっ、本当だ。あなたはキザキ ケイジさん」 「当たり前だろ」 「す、すみません。間違ってあなたを死なせてしまいました」 「は?またまた~。もうドッキリなら、種明かししてくれよ。俺はそんなに暇じゃねえんだよ。今日はバイトの面接があるんだから勘弁してくれよ」 「ほ、本当なんです。あなたは死亡してるんです。これを、見ていただけますか?」 そう言ってサトウが手をかざすと、床が巨大モニターになった。 「うわっ!」 巨大モニターには、俺の家の屋根が映し出され、黒塗りの車が横付けされていた。 俺の母ちゃんと父ちゃんが、すすり泣きながら、家から出てきた。 母ちゃんが手にしているものが、アップに映し出された。 「えっ?俺?」 それは俺の遺影だった。 「おい!なんでだよ!なんで、俺の葬式がたってるんだよ!」 「えーと、死因は心不全です」 「そんな馬鹿な!一度だって、心電図にも異常が出たことないのに!」 「正確に言うと、キザキ ケンジさんが、その病名で死ぬ予定でした」 「おい、ふざけんな、お前!」 俺は思いっきり、サトウという中坊もどきの首を締めあげた。 「や、やめて!無駄です!僕は死にましぇ~ん」 「古いドラマみたいなセリフ、吐いてんじゃねえぞ、このクソガキ!」 「ほ、ほんとなんです。死神は死なないんですよ。」 荒い息を吐くと、俺は力が抜けて、サトウの首から手を離した。 「俺は、どうすればいいんだよ・・・。」 情けないけど、涙が出てきた。なんで俺がこんな目に。 「す、すみません。僕のミスで・・・」 サトウが小さな声でうなだれた。 「すみませんで済めば警察はいらねえんだよ。ま、あの世で警察もねえけど」 サトウはオロオロするばかりで、まったく頼りになりそうもない。
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