メーデー・メーデー・メーデー

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メーデー・メーデー・メーデー

ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ ・・・やだっっ 体育の授業でもこんなに走ったことがないのに、彼此十分以上は走り続けている 流石に限界は迫っていて このまま走っていては捕まるのは時間の問題 何処に逃げ込もうかと考えているのに 酸素が頭まで回らなくなったのか ひとつも浮かんでこない それなのに バタバタと追いかけてくる足音は確実に近付いていて ・・・万事休す 諦めかけたその時 壁から伸びてきた手に引っ張られた 「シーーーー」 「・・・っ」 声にならない叫びを飲み込み目を見開く 人差し指を唇に付けたのは見覚えのある人だった 荒い呼吸を落ち着けながら周りを見る 引き込まれたところはカーテンの閉まった埃っぽい教室で それよりなにより 急場を救ってくれたこの人・・・ 確かこの学校でファンクラブまであるイケメンで有名な神楽坂尊(かぐらざかたける)君 「鬼ごっこ?」 私の腕を掴んだままクスと笑った 「・・・ち、がいます」 「え?違うの?」 「・・・違います」 そんな楽しいもんじゃない 「じゃあ、助けなくて良かったのかぁ」 怠そうに欠伸をした 「いえ、助けて貰って・・・」 「シッ」 良かったと続けようとしたところで扉の外に足音が止まった ・・・どうしよう オロオロする私に 「助けて欲しい?」 ジワリと近付き耳元で囁く声は意地悪に聞こえるけれど、考えている余裕なんてなくてコクコクと頷く 「クッ、可愛い。ヨシ、助けちゃお」 戯けた喋りと同時に腕の中に身体が抱き込まれた途端 「・・・っ」 背後でドアの開く音がした 「か、神楽坂さん、此処に女が来ませんでしたか、あっ」 「あ゛?俺のお楽しみ中を邪魔するんじゃねーよ」 「・・・す、みませんっ」 「ほら、此処じゃない他探せ」 「チッ、どこ行ったんだ」 私を追いかけていた奴らの声が遠のく ホッとしたのも束の間 「うさぎちゃん、良い匂い」 動けない私の頭の上から甘い声が降った
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