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兄としての『譲歩』
別に彬人が今更倫理観云々を持ち出そうとは思っていない。
そもそも本人にそんなものが備わっているのか疑問なのである。
しかし、そこは一応『兄』として指摘しておく。
「少しは兄の前で控えめにしてくれませんか?」
その言葉の意味に気づいたのは沙良だった。
何を意味するのかを悟り、顔を真っ赤にて目を逸らす。
蒼については、何か問題なのか? という顔をして彬人を睨みつけていた。
また、蒼にとっても一般的な倫理観など持ち合わせてはいなかった。
「はぁ……全くこの坊ちゃんの感覚なんとかなりませんかねぇ」
彬人は溜息をつき頭を抱え込んでいた。
分からなくても察することぐらいは、期待したかったのだ。
しかし、それが意味を成さないことを今更ながらに痛感する。
もう、それに対して突っ込むことは止めることにした。
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