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「それは、俺も同じだ」
三浦の方の言葉に、泰時は頷いた。
「あなたには、他の子ども達もいるでしょ」
「凪子が嫁に行ってしまったから、子ども達は全員、俺の手元から離れた」
「そう……確かに、それも寂しいわね」
子ども達には、そして妻の澪にも言わないが、泰時は寂しい、と思っていた。
「でも、あの子達は私達のこんな気持ちなんか、考えもしないのよ」
そんな自分に、三浦の方が言葉をかけてくる。
「自分の未来を考えることに夢中で、私達のことなんて、一欠けらも思いつかないわ」
「まあ、俺達もそうだったからな。人のことは、言えないだろ」
そう言って、泰時はきらめく海面を見つめた。今頃、海達が乗っていた船が出航しているだろう。
同じように、博多の海も煌めいているのだろうか?
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