召喚獣と一緒。

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 俺は立ち上がると、達弘から貰ったものを食い入るように見つめた。  なんてことない人物写真。でも写ってるのは俺にとって、かけがえのない家族の写真だ。  俺と違って契約している達弘は、普段自分の世界にいる。そして召喚者が危機に陥ると、異世界から喚び出されるのだ。  前回達弘と会ったとき、家族写真を持って来てもらうよう頼んでいたので、わざわざ持って来てくれたらしい。 「楸(ひさぎ)のやつ、心配してたぞ」 「楸が?」  俺は少し驚いて、写真を見つめた。家族の写真、真ん中に両親。左に妹。右に俺。その隣に写る仏頂面したのが弟の楸だ。  妹も弟も、父親似なせいか、美少女美少年。俺一人母親に似たらしく、平凡顔なんだよな。それ言うと母親に切れられるけど。 「ラギちゃんは可愛いんだから、いいのよ!」  あれ、今誰かと被ったような。うん、気のせいだよな。  二人とも小さい頃はに~たんに~たんと、俺の後を着いて来てたんだけど、最近は思春期なのか、話しかけても碌に返事もしてくれなかったから、達弘の言葉に頬が緩んでしまう。そっかぁ。 「ブラコンめ」 「ブラコンですよぅ。あ~、二人とも可愛い!」  ぎゅむっと写真を胸にかき抱く。 「妹の椿ちゃんはともかく、楸を可愛いと言えるのは、お前くらいだわ」 「なにを言う。楸は可愛いぞ。小さい頃なんかな、女の子みたいで、大きくなったら俺をお嫁さんにすると言ってだな……、あれ? お嫁さんになるの間違いだよな。とにかく可愛いんだ」 「知るか。それより言霊魔術とか覚えてどうするつもりだったんだ?」  この後続けるつもりだった家族愛についての話を、強引にぶった切る達弘。酷いっ。 「毎回毎回耳にタコができそうなぐらい聞かされてりゃ、嫌にもなるわ」  えぇ~っ、そうだったっけ。まだ喋り足りないんだけど。しかし不満そうだろう俺の顔を睨んだ達弘は、さっさと話せとばかり手を振った。ちぇっ。 「魔力なくても使えるって聞いたからさ」  この世界、能力があるかないかが全てだ。簡単に言うと、能力があれば出世して、能力がなければ落ちこぼれ。生まれたときに既に決まると言っていい。すごい世界だよな。  でもだからと言って、能力がないからなにもできないだと、生活すらままならない。そこで生まれたのが言霊魔術というやつだ。言葉に籠められたキーワードを展開して、この世界に在るエーテルと呼ばれる力ある存在を、魔力に換えるらしい。  力ある存在といっても、空気みたいなものぽいんだけど。その辺はまだよくわからない。元の世界で言う電気とかガスとか、そういうエネルギーだろうと思う。  これが自由に使えるようになれば、今みたいに全くの役立たずじゃなくなると、この魔術を知った俺は狂喜したね。資料を読むため文字も頑張って覚えた。  そしてなんとか読み解いて今日、ワクテカで試してみたって次第。本には赤ん坊でも使えますとあるし、俺もこれで勝ち組の仲間入りってウキウキしてた。  ――うん、それがことごとく失敗するまでは。しくしく。 「大人しくサリュー殿下に護られてりゃいいんじゃねぇの?」 「いや、だって俺も男だぞ。誰かに護られっぱなしってのはカッコ悪いというか……。それに俺が役立たずのままだとサリューの評判も下がるし」  よくわかんないんだけど、俺への風当たり、最近はそんなに酷くないんだよな。やっぱ結婚したせいだろうか。それを思えばサリューのしたことは悪いことばかりじゃないのかも。
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