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隣のクラスの鈴木さんは、猫をかぶっている。
そして、どうやらそれは他の人には見えていないらしい。
「暑くないの?」
「え?」
サンサンと降り注ぐ太陽の中、中庭のベンチに座っている彼女に声をかけてみた。
他クラスの男子がちょっかいをかけにいくほど美人であるらしい鈴木さんの首の上にはふわふわの大きな猫の被り物がついている。
「冬の時期は良いけどさ、気温も湿度も上がってきたじゃん?暑くないの?」
「確かに、暑いけど・・・それはみんな一緒じゃない?」
不思議そうに首を傾げ「夏なんだし暑いのは当たり前だよ。」なんていう鈴木さんに心の中で「違う。そうじゃない。」とツッコミを入れる。
「それに、高野さんだって暑そうだよ。」
可笑しそうにクスクスと肩を震わせている鈴木さんに視界の端で男子が盛り上がっているのが映る。
「夏だからねー。」と適当に返事をしながらまじまじと彼女を見つめる。
(確かに、可愛いいんだよなぁ。)
ふわふわの白い毛並みにつぶらな瞳。ちょこんと乗っかるピンクの鼻。
正直、癒しである。
「でも、嬉しいな。私、高野さんと話してみたかったんだよね。ずっと気になってて。」
照れたように頬を擦る仕草が本当の猫みたいで本当に可愛い。
「そうなの?わたしもずーっと気になってたんだよ。話せてよかった。」
ふわふわとお花が舞っていそうな空間を鈴木さんと形成していると、遠くから体育教師の怒鳴り声が響いてくる。
「勝手に見学をするな戻ってこい!!!!」
「あー。バレたあ。」
カンカンに怒っている教師の様子に渋々立ち上がる。
「しょーがないな。戻ってあげよう。あれじゃあ血管破裂しちゃうもんね。」
はぁ〜っとこれみよがしに大きなため息をついて移動をすれば後ろでクスクスと楽しそうに笑う声がした。
「またね。鈴木さん。またお喋りしよう。」
次はもうちょい深く聞けるかな?なんて笑いながら
鈴木さんにヒラヒラと手を振った。
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
「うん。またね。」
気だるげに授業へと戻っていく高野さんを見送ってギュッと手を握る。
(緊張した。びっくりした。·····でも、お話出来た。)
まだ心臓がバクバクと音を立てている。
なんて言ったってあの高野さんだ。
この学校に入学して人目見た時からずーっと気になっていた。
(また、お話してくれるって言ってた。·····次はもうちょっと頑張ってみようかな。)
誰も気がついていないようだけれど、
隣のクラスの高野さんはいつもお面をつけている
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