21人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
三人称、高校の同級生、車でする
ザンと重い波音が車内に響く。
初めては海に、その約束どおり訪れた海はもうその色を薄暗い藍色に染め始めていた。
明日行くの?
うん
夢を叶えるための旅立ちは喜ばしいはずなのに、どうしても今は寂しさの方が勝る。運転席から指が伸びて、海を眺める横顔を捉えた。軽く伏せた長いまつげの奥、瞳がゆらめいている。
言葉はなくても通じている。そう思えたのは互いに対してだけだ。
首を伸ばして唇で熱に触れる。いままで何度もそうしたように。
助手席の彼はフラットシートって……やらし、と呟いてから首に腕をまわす。波と鼓動だけが響く。
ここは俺専用だからなと涙を含んだ小さな声、そして湿った音。
それが二人の初めてのドライブだった。
最初のコメントを投稿しよう!