想い

6/11
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
御堂筋店は、道頓堀から流れて来る客も多く、数十メートル先にはライバル会社の百貨店も存在している。 それより何より、商店街が最大のライバルで、庶民的な昭和の雰囲気の店もあればお洒落な小売店が引き締めあっている。 戎橋でグリコの看板を背にして素早くスマホの自撮りで写真を撮ると、遼子へ送った。 「鈴木さん、お昼は大阪へ来たのだからお好み焼きを食べよう。」 ふたりは戎橋の川沿いにあるお好み焼き店へ入った。 「鈴木君は大阪は初めてだったね。僕はこれで3度目だけど、いつも仕事だから大阪城とかUSJとか行ってないから行きたいな。」 「そうですね、私も機会があれば行ってみたいです。」 やはり彼女は連れてって下さいとは言わない・・・何故だ? 素敵=恋ではない。翔子は菅谷に好意はあるが好きというものではなかった。 今の翔子には鎌倉巡り、そして浅野の存在である。 そして、本番のお好み焼きを堪能すると菅谷と一緒に御堂筋店へ入った。 インフォメーションで菅谷は名前を告げると、ほどなく店長の美濃田が恵比寿天の様な笑顔で現れ、応接室へと案内された。 40代半ばぐらいの中肉中背の男性である。 本社の管理部からの視察は、一歩間違えれば査察へと変わり、自らの管理能力を問われる。 「東京からようこそお越し下さいました。」 美濃田はさすがに関西人、世間話から経済、国際情勢まで、巧みに会話を繋げる。 菅谷も負けまいと対応するが、美濃田が時折放つ翔子への視線は中年男のやらしさであるが、翔子は感じ取っていない。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!