scapegoat

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「ぜっっったい違います! ありえない! ほんとに! この間会ったのが何年振りかなって感じだったし!」 促音のところで窒息するんじゃないかと思うくらい息を止めて否定する。完全に酔いが冷めて、旦那や俺、兄さん、おっさんの顔を忙しなく見ている。 「だって、俺、男好きになったの、本当にこいつがはじめてで」 そして話せば話すほど、露骨に声が小さくなっていく。カノジョの表情もどんどん硬化していく。 「あ、うん、そうだろうなっていうか、そうだって聞いてたし、うん、そこは疑ってないよ」 兄さんが慌ててフォローした。旦那は少しオロオロしながら、二人の様子を目で追っている。 「じゃあ、こいつ嘘が言ってる?」 俺は草むらで身を屈めて様子を伺うみたいに、静かに口を挟んだ。 「た、ぶん」 カノジョは自信なさそうに呟いた。 「同級生の書道家なんて俺しかいないと思うけど、本当に大して親しくなかったし、ハッキリそうだって言えるほど知らないし」 「まぁ、な」 言い切っちゃうのもね。間違いなく相手はカノジョではないってことしか言えないわけで。 「まぁ嘘だろうけどな。久しぶりにお前に会ったのは向こうも同じなんだろ」 兄さんはすでにネタに飽きたらしく、熱燗を頼みながら塩辛を食べ終えていた。
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