千年後の世界

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 今回の狩りの成功には、父と母だけでなく群れに属する他のプラチナウルフ達も称賛してくれた。まあ俺に対しては鋭い視線も感じるが……。相手は特定出来ているので近いうちに決着をつけようと考えている。 『お前達良くやった。これからは守られる者としてではなく、共に生きる群れの一員として認めよう。単独での森の出入りも許可する。さらに強くなれ、我が子達よ』  父の言葉に応えるように、兄弟と俺は雄叫びをあげた。  次の日以降、俺はウルガとつるんで森へ出掛けるようになった。特性の吸収もそうだが、武器を作る為の材料集めと修行を兼ねてだ。  一昨日は牙を削る研磨石と持ち手に使う丈夫な蔦を採取しにいった。これが結構苦労したのだが、良質な研磨石はロックトロールの背中から採取する必要があり、そこで戦闘に発展した。普段大人しいロックトロールも身体の一部を狙われれば当然襲い掛かってくるので、それは想定内だった。  凶暴化したトロールに対して、ウルガが速さで掻き回し、ヒットアンドアウェイを繰り返す。岩の如く頑丈な体にはダメージが中々通らないため、ウルガが気を引いている間に俺が背後から研磨石を削ぎ落とすという作戦をとった。  順調に立ち回り、研磨石に手が届く位置まで移動――呆気なく終えられるかと思ったが、何とそこでトロールの仲間が現れたのだ。しかも二体も。  さすがの俺もこれには焦った。しかし目の前にある研磨石を諦めたくはなかったので、俺とウルガの全力を持って奴らを倒し、何とか採取に成功した。    怪我はしたが、【石化】の特性も得られたので俺は大満足だ。  そして昨日は、材質を硬化させる鬼ツバメの液袋、熱や火の耐性を持つファイアアントの蟻酸(ぎさん)の採取に行った。  液袋は気性の荒い鬼ツバメを倒し体内から取り出す必要があり、蟻酸はファイアアントの体から分泌されるものを採取する必要があった。どちらにしても戦闘は避けられないため、こちらもウルガと協力し何とか目的を果たした。  因みにファイアアントからは特性【熱・炎耐性】を、鬼ツバメからは【鬼の形相】を吸収した。  鬼ツバメについては硬化系もしくは飛行などの特性を得られると考えていたが、まさかの形相……。  まあそんな感じで森の探検を楽しみつつ、欲しかった素材が揃った為、これでようやく武器の制作に入れる状況となった。なので、今日は森には行かず一日引きこもることにした。
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