0 / 嘔吐

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「 げほっ、ゔっ………ごほっ……っ!」 ―――嗚呼、気持ち悪い。頭が上手く回らない。 生理的に溢れた涙で霞んだ視界に映ったのはとても汚い自分の吐瀉物。噛みきれていなかったのかまだ少し原型を残していた食べ物達がトイレの便器の中に無様に落ちていた。 嗚呼、可哀想に。俺なんかに食べられたからこんな有様なのだ。もっとこの食べ物を美味しく、幸せに食べてくれる人に食べてもらえたのならきっとこの食べ物たちは天命を全うして幸せに一生を終えれたことだろう。 …まあ火を通した時点でもう既に半分以上の命は終わっているのだろうから関係のないことなのかもしれないけれど。 それでも俺以外に食べられた方がまだ良かっただろう、栄養にもなれずに小汚いトイレで吐き捨てられて結局ゴミとして一生を終えてしまうよりは幾億倍マシだろうから。 「はは、ほんとだせえな俺…」 俺は吐き出した吐瀉物と今の自分の有様を自嘲気味に笑う。 本当にどうしようもない人生だ。 食べては吐く、いくら食べても吐いても涙が溢れるだけで気持ち悪さは止まらない。食べなくちゃ栄養にならない、吐いてはいけない、そんな風に考えていても毎日毎日同じ過ちを繰り返してしまう。明日はやめられるかな、明日は楽に生きられるかな、そんな希望を持っても結局何も変わらない。 「……また、食べないと」 これはもはや依存のような、呪いのようなものでどうやらやめられるものではないらしい。三大欲求の一つ、食というのは一種の麻薬のようなものなのだ。 俺はきっとずっとこのままなのだろう。 毎日沢山詰め込んで、吐き出しては足りない、そんな毎日のままで生きていくだけなんだ。 ――― 俺はずっとこの行為に捕らわれている。
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