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20話
色々と落ち着いた後、美来の隣に戻ると一瞬目が合った。でもすぐ布団の中に隠れてしまって、ちょっとした寂しさを感じる。照れているんだろう事は何となく分かっているけど、大好きな彼女の顔はいつでも見ていたいのに。
「何で隠れちゃうの」
「だって恥ずかしくて……」
「隠れるのはだめ。顔見せて?」
布団の中を覗くと、照れくさそうにしている美来の顔が見える。
「早く出ておいで。出てこないと……」
「こないと……?」
「布団捲って美来の裸をばっちり見る」
「ひぇっ……」
すぐに布団の中から出てきた美来の頭を自分の腕に乗せて、腕枕をした状態で抱き締める。やっぱり美来に触れてると安心する。
それにしても、さっき既に見てるのにやっぱり恥ずかしいのかな。美来にしては素早い動きだった。
「このまま寝ようか」
「腕疲れない?」
「美来と少しでもくっついてたいんだ」
抱きしめたまま顔を摺り寄せると、くすぐったそうにしている。
「体は大丈夫?痛かったりしない?」
「うん、大丈夫」
「それならいいんだけど……結局泣かせるぐらい痛くしちゃってごめん」
至近距離で見つめながらそう言うと、美来の手が俺の頭に伸びてきて数回撫でられた。彼女の方からそんな事をしてきたのは初めてで、驚きのあまりされるがままになる。
「そんな顔しないで。……私ね、隆司君には感謝してるの」
「感謝……?」
「私、昔からずっと自分に自信が無かったんだ。地味で冴えないのは誰に言われなくても分かってたし、人付き合いにも凄く臆病で……友達も少なくて、特に男の子とは積極的に会話するようなタイプでもなかったから、そんな自分に恋人が出来るなんて想像もしてなかった」
俺を見つめる美来の表情が、少し自嘲気味に見える。
「だけど隆司君と出会って、好きだよ、可愛いって毎日言ってもらえて、たった1人だとしてもそんな風に言ってくれる人がいるんだと思ったら、少し自信が持てるようになった気がする」
「俺は美来の事が好きなだけだよ。周りに重いって言われるぐらい、美来の事しか考えて無いだけで……」
「私にはそれが嬉しかったの。こんな風に大切にしてくれる人がいるって凄く幸せな事だなって」
「美来……」
「隆司君に出会えて本当に良かった。そう思えるぐらい大好きな人だから、さっきの痛みだって辛いよりは幸せな痛みだよ」
優しい笑顔でそう言う美来に不意に泣きそうになって、咄嗟に彼女の首元に顔を隠した。
「――出会えて良かったのは、俺の方だ……」
自分の気持ちを受け入れてもらえる嬉しさと、同じ様に気持ちを返してもらえる幸せを教えてくれたのは美来だから。
今でも自分が重いと言われる理由は正直よく分かってない。あの日、ゆうちゃんにフラれた時からの疑問も何も解決していない。でも、そんなのどうでもよくなった。美来がそれでいいと言ってくれるなら、周りにどう思われても関係ない。俺は俺の愛し方をするだけだ。
「美来……」
「ん?」
「こっち向いて」
美来の顔を横に向けておでこをくっつける。この距離で見つめると、美来の瞳の中には俺だけが映りこんでいる。きっと、俺の瞳の中にも美来だけが映っているはず。
「ずっとこうやって俺だけに愛されて、俺の傍に居て?」
「……うん」
「好きだよ……大好き……」
「んっ……隆司く……っ……」
気持ちが抑えられなくて、何度もキスをしながら言葉にする。言葉にして触れ合う度に気持ちがどんどん膨らんでいく。それこそ、この気持ちを重みで表すならきっとヘビー級に重いと思う。
でもそんなの当たり前だ。だって……
「美来……愛してる」
好きよりも、大好きよりも一番俺の中でしっくりくる言葉を伝えると、今までで一番幸せそうな笑顔を見せてくれる。
これから先、就職して結婚して、そして家族が増えてからも俺の美来に対する愛はどんどん増していくと思うけど……
「ずっと受け止め続けてね、美来」
「うん……」
気持ちを伝えあうように、抱き合いながら何度もキスをする。
2人だけの空間でお互いの事だけ見て、誰にも邪魔されないはずなのにこれ以上ないぐらいにピッタリとくっつく。
何があっても離れないように……ふと天井を見た時に夜空に流れた流星にそう願う。
再び熱が籠ってきた体をどうやって冷ますべきか悶々と悩みながら、星空に見守られる愛おしい彼女と触れ合う夜が更けていった――。
===END===
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