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第3幕 ナチスの恋人 二
ナチ党員の士気を高める演奏会を控えた今、本番前のコンツェルトハウス劇場の点検にロイヤルはいそしんでいた。
ずらりと茶褐色の制服を着たナチ党員たちが腰かける客席の頭上に二列に連なる涙型のシャンデリア。
両側壁の側面上方には二階席。
正面の舞台には、パイプオルガンが堂々たるたたずまいで鎮座していた。
舞台上にはグランドピアノが置かれ、クライマックスのラプソディー・リップスの演奏で、党員の士気を盛り立てというのが今回の主たるコンセプトであった。
足元を照らす光の加減にふいに違和感を覚え、ロイヤルは黒い革靴を止めた。
まず、主たる光源である天井のシャンデリアを見上げる。
高い位置にあるあの大掛かりな装飾品に細工をするのは、時間も手間もかかる。
となれば。
ロイヤルは壁に一定間隔でとりつけられた花形のランプに見入った。
一輪の百合の形をしたランプが、球形のガラスに覆われているものだ。
やはり。
電球の外側を覆っているガラスの部分にいくつもの穴が空いている。
すべてのランプを調べたが、そのどれにも穴は空いていた。
そのうちの一つのガラスを外し、吟味する。
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