こっくりさん

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 こっくりさんなんて、うちの母は全くやりそうにない。母の口からこっくりさんという単語が出てくるだけで意外なのだから。  話を聞いてみると、中学生の頃だったかにやってみたらしい。  と言っても、私の予想通り母はそういったものをやりたがるタイプじゃない。興味なんてまるでなかったけれど、当時の友達に頼み込まれ、仕方なく付き添い兼、部屋の見張りとして参加したそう。  実際にやるメンバーじゃなくて、見張りだったらと言うあたり、うちの母らしい。  こっくりさんメンバーは、仲の良い子もいれば、顔が分かるだけであまり知らないような子もいたそう。  母的にはなんかよく分かんない事やってんな〜程度だったけど、だんだん雲行きが怪しくなってきた。  子どもの頃に聞いた話なので、かなりうろ覚えで曖昧なのと、話が話だったので母もあまり詳しくは語らなかった。  1人の子の様子がおかしくなるのが早かったのか、部屋に先生が入って来て10円玉から手を離してしまったのが早かったのか。  とにかく、一緒にこっくりさんをやっていた1人が取り憑かれたようにおかしくなり、その場はパニックになってしまったのだと。  こっくりさんでは、狐の霊に取り憑かれる、と言うのもよく見かける話。  でも、それはあくまで嘘みたいな話だから盛り上がれるだけ。実際に遭遇したら、心底どうしたらいいか分からなくなると思う。  結局、その女の子はそれからしばらく学校を休んで、そのまま辞めてしまったらしい。田舎の噂話で、精神的におかしくなってしまってもう戻らない。と、耳にしたそう。  だから、こっくりさんはやらない方がいい。怖い話にハマりまくっていた当時の私に、母はそう話した。  怖い話ブームがきたりすると、こっくりさんをやってみようと言う話題も勿論出たりする。でも私は毎回、この話をする。それでもまだやりたいと言う人は、今のところいない。  人の心は気になるし、不思議な話も好きだけど。  何か大きな代償を払うことになってまで、やりたいわけじゃない。誰かが不幸になってまで、やりたいわけじゃない。身近な人の体験談ほど、身に染みるものはないな、と。  
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