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アップを行う為に、コートに入ってきた彼。
サングラス越しなのに、不機嫌そうなのが手に取るように分かる。
「アイツ、あんな嫉妬深いヤツだったんだな。手でも振ってやってよ」
「いやー、そんな事した事ないので」
「そうなの?」
「はい。ま、大丈夫ですよ。試合が始まれば忘れますから」
「でも、きっとヤキモキしてるぞアイツ。軽くでいいからさ」
「えー」
仕方なく、ホント仕方なく、のりくんに手を振る。
これ、マジで恥ずかしいんだけど。
そしたら、手を振り返してくる。
やっぱマジで恥ずかしい。
「ほら、やっぱり手を振って正解だったな」
そう言いながら笑っている森本さん。
ほんと、バレーやってる人って、ドエスしかいないの?
森本さんに揶揄われながら、アップをしているのりくんと淡路さんを観察する。
二人とも不調は無さそうだし、むしろ昨日より調子が良さそうにみえる。
試合が始まれば、のりくんはいつものように、プレーに集中していて、淡路さんの指示を見逃さないように、動きに注視している。
淡路さんは、のりくんの良い所を引き出そうと、彼のプレースタイルに合わせるようにボールを運んでいる気がする。
驚くほどスムーズに点を重ね、タイムアウトを使う間もなく、試合は勝利をおさめた。
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