琥珀色の夢

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 ふと、あることに私は気づいた。その気づきは本来起こってはならないもののような気がしてひどく恐れを抱く。  今、今この時。私は自分がどこにいるのか分からなかった。  私は確かに望んでここにいる。そして、満ち満ちた幸福に包まれ、胸いっぱいに温もりが広がっている。  美しいピアノの旋律に身を任せているように穏やかであり、落ち着かせてくれる。そんな数秒前があったはずだ。  でも、思い出せない。  私はここで、何をしていたのか。なぜこんなにも幸福なのか。私は何のためにここにいるのか。そのすべてが思い出せずに、記憶が真っ暗なのだ。  だんだん視界も暗くなっていくようで、このまま記憶どころかすべてが消えてしまいそうで、さすがにダメだと思考を置いていくことを決意し、今の景色に集中することにした。  私は湖畔の上で立ち尽くしている。目の前に広がる湖は、艶やかな琥珀色。トパーズのように滑らかでもあり、油彩画のようにゴテゴテでもある。絵画のようなその世界。  季節は秋だろうか、鮮やかな橙色に染まり上げた山々。  四方八方がそんな景色に囲まれ、まるで箱庭だ。  別にキャンプをしていたわけでもない。  私はただ、この景色に見とれていたのだ。または、この景色の中に自分が溶け込んでいることに酔いしれている。 ――これだ。これが描きたかったんだ。  ここで一生絵を書いていたい。
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