逃亡者

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逃亡者

辺りは薄暗い独居某の廊下を二人の刑務官は歩いていた、牢屋は刑務所の一階、地下室と二つの階に分かれている、その中でも地下に収監される囚人は過去に凶悪な事件を引き起こした極悪人が送られてくる場所だ、普段入ることのない地下の廊下を若手の刑務官は緊張を隠せなかった、地下の天井には雨粒がポツポツと漏れだしており、雨粒が落ちるその音はより不気味さを醸し出している、不安な顔で目的の場所へと前を歩くベテラン刑務官に着いていった、「ここだ、」前を歩くベテラン刑務官は突然そう言うと、側にある牢屋の方へと振り向いた、「おい!起きろ」若手刑務官は慌てて牢屋の方へと振り向いた、「、、、、、」刑務官が声をかけても薄暗い牢屋の中から返事はなかった、「起きろ!!」 腹を立てたベテラン刑務官は今度は先程よりもでかい声で話しかけた、「ガサガサ」すると奥の方から物音が聞こえてきた、そしてこちらに歩いてくる足音も聞こえてきた、「はい、」次の瞬間二人の刑務官の前に囚人は姿を現した、囚人はかなりの大男で難いが大きく、そしてよく見ると目元には長い線のように深い傷痕があった、思わず若手刑務官はその男に嫌な恐怖を感じてしまった、「明日の午後で刑期を終えることにる、今のうちに身支度をしとけ、出所前には片付けておくように。」ベテラン刑務官はそう告げると、すぐに歩きだしその場から去っていった、地下を抜けようと階段の方へと向かう前にもう一度、その囚人の方を振り向くと、既に姿は奥の方へと消えてしまっていた。 夜の10時になると段々回りにある店は閉まっていく、そんな少し物寂しい夜道の商店街を何も考えることなくサラリーマンはとぼとぼ歩いていた、この商店街は小学生の頃から登下校時には必ず通る道であった、だが通りすぎていく明かりの消えた店を見ると、子供の頃によく通っていた駄菓子屋は店主のおばあさんが倒れた事で今は雑貨屋に変わっている、歩く夜道は懐かしい子供の頃の思い出に浸っていた。 「早くしろ!なにもたついてんだ!」一人の男は慌ただしく会社のデスクを取り出しては何かを探し回っていた、「時間がない、牧原、ブツは見つかった?」同じくして会社に居合わせていた大木は不安な表情を見せながら誰かに怯えているかのように窓を覗き、会社の外を確認していた、「ガサガサ、ガサガサ」焦りながら社内の中を探し回っていると、ようやく牧原は目的の物を見つけると声を上げた、「あったぞ!」そう言うと大木は安心したかのように、牧原の元へと駆け寄ってきた、「ハハハ、ホントにあるとはな」二人がほっとしていたその時、外からでかい発砲音が5発程鳴り出した、「ヤバイ、早く逃げるぞ」牧原は見つけ出した物を小さな袋に詰め込んで入れるとすぐに社内から飛び出していった、会社の外に出ると、空を見上げながらとぼとぼ歩いているサラリーマンの姿が見えた、慌てながらそのサラリーマンの横を走りながら通り過ぎた、「内の会社でなにしてたんだ?」サラリーマンはしばらくその場に立ち止まり考え込んでいると、遠くから叫び声が聞こえてきた、周りを見渡すと奥の道路沿いからこちらに向かって走ってくる男達の姿が見えた、よく見ると手には銃を持っている、サラリーマンは突如として恐怖を憶え思わずその場から逃げ出した、その五分後には商店街の細い裏路地から逃げ惑う大木と牧原の姿があった、その二人を追いかける後ろには、武器を所持したヤクザ達がひたすら銃で二人に向けて撃ち込んでいる、「バン!バン!バン!」撃たれた弾は路地裏の建物の壁に当たり、壁から薄く煙がたち上ってきている、ひたすら二人は無我夢中で走り抜けた、「待てコラァァァ!」後ろからの襲撃は容赦がなく、発砲音は止まることがない、「バン!」その時、放たれた弾は大木の足元に貫通してしまった、大木は絶叫しその場に倒れ込んだ、大木が撃たれた事に気がついた牧原はふと後を振り向いた、「逃げろ!牧原ー!」大木は必死に困惑する牧原に訴えた、するともう一発弾が撃ちこまれた、「バン!」弾は大木の頭部に当たりそのまま大木は絶命してしまった、「ヴァーーーー!」牧原は意を決して再び走り出した、どんどんと息があがるなか逃げる先に三方向で分かれた大通りが奥から見えてきた、後ろから弾丸が飛んでくるのを恐れながら牧原は走り続けた、大通りへ辿り着くとすぐに牧原は横へと曲がり近くの商店が立ち並ぶ壁の隙間へと隠れた、必死に息を潜める牧原の心臓は外から聞こえる怒声によって心拍数がどんどんと上がりだしている、「ドク!ドク!ドク!ドク!」すると額から冷や汗が頬へと流れ出した、牧原は意を決して目を閉じた、「ドク!ドク!ドク!」次の瞬間、壁の隙間に隠れる道から何人かの人が走り去る音が聞こえてきた、慎重に目を開け壁の端へと顔を出し外を見渡すと、遠くへと走り去るさっきの奴らの姿が見えた、「助かった~、死ぬところだった」牧原の肩の力が突然抜けその場に倒れ込んだ、しばらく座り込んでいると何かを思い出したかのように小さな袋を取り出した、「大木の死は無駄にはしないぞ」牧原はそう誓った瞬間、「ガチャン、」 背後から拳銃を向けた音が聞こえた、「まさか!」恐怖の余り思わず振り向くことが出来ず、そのまま体が固まってしまった、「その白い粉は大麻だな、一体何処から入手したんだ?」ふとその声に牧原は違和感を感じた、「教えてもらおうか、何処から入手したんだ?」牧原の体は軽くなりすぐに後ろを振り向くと、黒いコートを着こなし拳銃を向ける男の姿があった、「誰だあんた!」牧原は警戒しながら男に問いかけた、すると一瞬の隙に男は手に持っていた袋を取り上げた、「北中央署の眞鍋だ」男はニヤリと笑みを浮かべ牧原を見つめた、その目付きは何を考えているのかわからない、まさに凶犬のように感じとり牧原は恐れた、そして次の瞬間、「この大麻はど、こ、か、ら、だぁぁ!」眞鍋は突然牧原に怒号を浴びせた、牧原は深く息を呑み込んだ。
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