ママへの手紙

あなたは今どこにいますか？
私のことを覚えていますか？

あなたは私を捨てました。あれは新品の赤いランドセルを背負い小学校に通い始めてしばらく経った頃のことです。

あの日あなたは家の近所にあるスーパーに買い物に行くと急に言い出しました。

「付いていく」とせがむ私に家で弟の面倒を見るように言いつけ、ご褒美に私の好きなアポロチョコを買ってきてくれると約束してから家を出ていきましたよね？

あの時のアポロチョコはまだ私の手元には届いていません。

日も暮れ、夜になってもあなたは帰ってきませんでした。

パパが帰ってきて何も食べす何も飲まずに過ごしていた私と弟を見て、驚いた顔をしていました。

春なのに寒くて布団に包まりながら空腹と戦い、食べ物を探しても何も見つからず、飲み物は冷蔵庫に入っていなくて何もできなかった私達のことを知っていましたか？

産まれたての妹が託児所で帰宅時間が過ぎ何時間も保育士さんが面倒見てくれていたこと考えましたか？

でも、こうなることは予測していました。まだ6歳だった私はこれがﾞ不倫ﾞだという言葉は知りませんでしたが「パパに内緒にして新聞配達のオジサンといけないことをしている」ということは知ってました。

隣の家のおばちゃんもその隣の家のおばちゃんもママと同じことしていることも知ってました。

子どもだからと言って何も考えていない訳ではないのです。知らない訳ではないのです。

隠してるつもりかも知れませんが全部バレてますよ？

大人になった今、戸籍謄本が必要となる機会がありました。そこに記されていた母親の欄にはあなたの旧姓の名字が書かれていました。パパとは離婚が成立しているにも関わらずに…。

あなたは今幸せですか？

ー完ー