チャンスは突然に

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一応キッチンを隈なく探して何とか見つけた一匹は、唯が要らない新聞紙の束で退治した。 あとは、 「うっ……ぐすっ……」 震えながら泣いている姫花を(なだ)めるだけ。 「姫花……もう大丈夫だから、泣かないで」 昔から、虫が大の苦手な姫花。 特にGは、その名称を呼ぶのすらも嫌がる程に嫌っている。 この家のキッチンはとても綺麗に使われていて、そんなのが出てくるようには思えないけれど…… マンションなのでご近所さんの部屋から逃げてきたとか、多分そういうの。 「物凄く怖かった……」 「もうやっつけたから」 姫花の部屋のベッドの上に2人並んで座って、彼女を抱き締める。 「まだ他にもいるかもしれないじゃん……」 「その時は、また俺が退治するから」 「うん、ありがと……」 普段は強がりな彼女が、こうして弱いところを見せてくれるのは、唯の前でだけ。 本当はか弱くて素直な子だということを知っているのも……唯だけ。 (優越感に浸るなって方が無理な話だよな……) 不謹慎だけど、そう思わずにはいられなくて。 「あの……唯……」 唯の腕の中の姫花が、潤んだ蒼い瞳で恐る恐る彼を見上げた。
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