初めてのデート

1/11
116人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ

初めてのデート

夏休みの宿題を、お盆が明けるまでにさっさと終わらせた桐生(きりゅう) 姫花(ひめか)は、彼氏である市川(いちかわ) (ゆい)を部屋に呼んで、デートの計画を立てていた。 実はこの2人、付き合い始めてしばらく経つというのに、まだデートらしいデートを一度もしたことがない。 初めてのデートは、姫花の誕生日当日に決行の予定だ。 その日は、2人で付けるペアリングを探すのがメインになるので、繁華街でのお買い物デートをすることに。 「繁華街行くなら、映画も観たい! 公開されたばっかのヤツ!」 ローテーブルの前に座った姫花が、宝石のような(あお)い目をキラキラとさせて、テーブルの向かい側に座る唯の顔を覗き込む。 「姫花の誕生日なんだから、姫花が行きたい所も食べたいものも全部選んでいいよ」 唯は、この上なく優しい眼差しで姫花を見つめて微笑んだ。 「……でも、流石にケーキ屋さんはやだよね?」 甘いものが苦手な唯を気遣って、姫花は恐る恐る訊ねた。 「気になるケーキ屋さんがあるの?」 「テレビとか雑誌によく取り上げられてる『パティスリー・トモ』ってお店が近くにあるから」 「あぁ……」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!