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「で、今日もさっさと帰るの?」
「ごめん、色々とやることがあって」
「でしょうね。仏様の化身だって」
悪戯っ子のように笑う優里に、花音は曖昧に笑うしかない。それは多分、あの時に会った優里のお父さんからの伝聞なのだろうが、あながち間違ってはいない状況になっている。
「ともかく、師匠が煩いのよ」
「はあ。師匠だって。まさかただの隠れオタ同盟の一員じゃなくて、本当に漫画のような世界で生きているなんて。羨ましいぞ」
「そ、そう」
「うん。でも、私には無理だと思うわ。あの時、花音が助けてくれなかった、私、死んでたもんね」
何となく覚えている優里は、ちょっと寂しそうに笑った。
ああ、これが今までと同じように生きていけなくなるってことか。それを実感してしまったが、もう花音は後戻りするつもりはない。優里には陰陽師という仕事をしていると打ち明けてあるのだ。
「じゃあ」
「うん。修行頑張れ」
「ははっ」
修行しに行くわけじゃないけどね。花音は元気になった優里にほっとしつつ、もう住む世界が違うもんねと、ちょっと寂しくなっていた。
あれから大変だった。
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