2420人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ
新藤鈴々先生 著
「部長どうしてですか!俺のこと、好きだって言ったのに……!女性と付き合うなんてひどいじゃないですか!」
「俺達の仲を悟られないようにするためだ」
葵葉は泣いていた。
気持ちはわかる。
けれど、社内で噂になれば、俺もお前もおしまいだ。
古い体制のわが社は男同士の恋愛に寛容ではない。
会社だけではない。
世間もか―――俺はどうなってもいい。
けれど、葵葉、お前が傷つくのだけは耐えられない。
「わかってます。部長が好きでもない女と付き合うのは俺のためだってこと。すみません。動揺してしまって」
「謝らなくていい。逆の立場なら、俺は嫉妬で狂っていただろう」
「部長っ……」
「部長じゃない。葵葉。俺のことを名前で呼んでくれ」
「が、凱斗っ……」
葵葉の涙を指でぬぐった。
その透明な雫は俺の手を濡らし、地面にこぼれ落ちていく。
「もう泣くな。今日は二人でなにかおいしいものでも食べよう?」
「はい。俺っ、作ります!二人で食べようと思って鍋の材料を買ってきたんです」
「そうだな。二人で過ごそう」
最初のコメントを投稿しよう!