不安の種

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「待て!!隆二!頼むから!!」 久しぶりの人間界だというのに、ヴァンピールの館では瑠花の絶叫が響き渡り、悠斗と朔夜は何事かと飛んで来た。2人がそこで見たものは、瑠花のトイレにくっついて狭い個室に入ろうとする隆二と、それを押し返している瑠花の姿だ。 「・・何やってんだ、お前ら・・」 「瑠花が離れちゃ駄目って言った」 「バカっ!冗談にきまってんだろ!」 言ったよ!確かに言ったよ!だがその対象が自分にまで及ぶとは・・。自分で放った言葉が特大のブーメランになって返って来て、瑠花はこみ上げる排泄感に腹を押さえた。朝から嫌な予感はあったのだ。扉を開け放して隆二がトイレから瑠花を呼んだ時から・・。照れ屋の隆二だったが、1度腹を括るとどこまでも大胆になるという事を瑠花は初めて知った。 「お前らなぁ・・」 額を押さえながら呆れた目を向ける悠斗の隣では、朔夜が珍しく声を立てて笑っている。 「隆二、自分だってそんな事されたら嫌でしょう?そのへんで勘弁してあげたらどうですか?」 「え?俺、見せたよ。ねっ、瑠花!?俺、綺麗な一本グソだったでしょ?」 「うん、見事な・・ってそうじゃねぇ!!俺はいいの!いいから出ろ!」 あ、何かが尻をノッキングしている・・。腹に力を入れるのは危険だ・・。 「あ~・・何だ・・まぁ、色んな性癖があるもんな・・まさか瑠花にそんな性癖があったとは知らなかったけど・・夫婦の問題だから・・」 「そうですね」 「あーーーっ!」 気まずそうに去って行こうとする2人に手を伸ばしたが、その手を握ったのは遅れてやって来た槇だ。 「瑠花様・・後でじっくりたっぷりお話を致しましょう・・隆二さん、目が穢れます。隆二さんは覡なのです。神の世界では汚物は不浄のものですので、ご覧になるものではないのですよ」 「そうかー、そうなんだー、槇物知りだねー」 妙に納得した様子で頷く隆二の手を引いて槇はトイレから離れ、瑠花は速攻でトイレに篭るとご丁寧に鍵を閉めた。スッキリしてトイレを出た瑠花が、リビングに顔を出した時には既に瑠花の頬は腫れ上がっていて、瑠花の後ろから来る槇がにこやかな笑顔を湛えている事に、皆は何があったのか静かに悟った。
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