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もう少し様子を見て、何をするでもなくのんびりさせてから、店番から始めてもらおう。製茶工場には店舗がついていて、工場で作っている緑茶や薄茶、茶器などを売っていた。一見客は少なく、普段は祖母が本を読みながらゆっくり店番をしている。椿は初対面の当たり障りのない相手には愛想がいいからなんとかなるに違いない。
「新郎側の親族誰も呼べへん式になってしまう」
椿が悲しそうに言う。
「友達もいいひん。ひいさんにはいっぱいいはるのにな」
向日葵は彼の肩を揺さぶりながら「がはは」と笑った。
「新婦側の人間で埋め尽くそうぜ。わたしの中学の友達二十人、高校の友達二十人、大学の友達二十人、親戚で二十人、仕事関係の人で二十人呼べば百人だ」
「ほんまに呼びそう……」
「あ。友達で思い出した」
放り出していたバッグからスマホを取り出す。
「京都学のグループLINEに椿くん入れ直さなきゃ」
椿が頬をひきつらせて「そんなもんもあったな」と呟いた。
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