冒険者登録試験開始

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冒険者登録試験開始

 昨日夕食を食べた多目的ホールで朝食を食べ、僕達は冒険者ギルドへと向かう。一人でも大丈夫だと言ったのだが、ルーファウスは首を縦にはふらなかったし、アランも「どうせ俺達も依頼を確認しに行くから」と二人揃ってついて来た。  そういえば、僕は今朝驚いた事がひとつあった。それは朝食を終えて洗面所へと向かい歯を磨こうとした時の事、鏡に映った顔が僕の顔じゃない!  子供の姿になっているのだから当然容姿は子供の頃の容姿になっているのだろうと予想はしていた、けれど実際はそれ以上の変貌だった。  鏡に映った僕はお世辞抜きに可愛かった。昨日女性陣に「可愛い可愛い」と撫で回された記憶も新しいのだが、それは子供だから可愛いのだろうと単純に理解していたのに、違った。鏡に映った自分の顔は本気で何処の子役モデルですか? と問いたくなるほどの美少年、驚きすぎて絶句していたら「何自分の顔見て驚いてんだ? 初めて見た訳でもないだろうに」と、アランに言われてしまったくらいに驚いてしまった。  だけど僕にとっては正真正銘今日が初見だから! まさか容姿がここまで変わってるだなんて想像もしてなかったからな!  肌がスベスベなのは勿論だが、瞳はくりっと大きいし、目鼻立ちも整っている。瞳の色は黒に近い濃い藍色で光の加減で蒼く見える。髪も同様、ぱっと見は黒いのだが、陽が当たるとやや青味がかっていて、ファンタジー色! と興奮した。  だってそもそも碧眼はともかく蒼髪なんてのは地球上には存在しない、それはアニメや漫画の中でだけ存在する色味で、染めているのでなければあり得ない色だ。  僕は今まで髪を染めた事がない、そもそもお洒落とは縁遠い人間だった。なのに突然目の前に存在するだけで様になる人物が現れたのだから興奮するなという方が間違っている。これは将来絶対美形に育つ、なんなら既にもう美形だ。魅了スキルのレベル高さの意味が何となく理解できた、そりゃあこれだけ見目麗しければ嫌われる事もそうないだろう。  人間は顔じゃない中身だ! とはよく聞く言葉だけれど、第一印象は所詮顔だからな。  そんな訳で、自分の容姿の変貌ぶりに驚きつつ、今日は試験だ! 冒険者ギルドに着いたら昨日受付をしてくれたお姉さんが今日もにこやかに受付をしてくれた。 「本日の登録試験の受験者は三名、あちらの部屋で全員揃い次第開始です」  そう言ってお姉さんに案内されたのは受付カウンターのある大広間の奥にある一室。そこには既に一人の受験者が座っていた。退屈そうに待ちぼうけている少年は見た目年齢14・5歳くらいだろうか。腰には剣をさげているので、恐らく剣士か何かだろう。  しばらく僕も大人しく待っていたら最後の一人が現れて、問題用紙が配られ筆記試験の開始。制限時間は60分だ。  そういえば筆記試験に関して名前が書ければ何とかなるようなこと言われて、それ以上には何も教えてもらってないけど大丈夫かな……? なんて用紙を裏返したら、試験問題は予想以上に簡単だった。  紙に書かれているのは大きな文字とイラスト、問題文を読んで答えを書いたり選択肢から選んだりするだけ。どこかで見たような感じだなと思いめぐらせ辿り着いた答えは子供のドリルテスト、しかも小学校低学年向け。  内容も『薬草A34本と薬草B23本を採取する依頼を受けました、合計何本納品すれば良いでしょうか?』 とか、『一体銅貨一枚の魔物Aの討伐依頼を受けました。あなたの討伐数は十三体、受け取る事ができる依頼料は幾らですか?』など、とても簡単な計算問題ばかりで、僕はものの10分程度で全ての問題を終わらせてしまった。  一応間違いが無いか一通り確認してみても残り時間は45分、暇すぎる……  少しキョロキョロと周りを窺ってみたら僕以外の二人はまだ頭を抱えて問題用紙と睨めっこをしている。そのうちに「君、分からないからってカンニングは駄目だよ」なんて用紙を配った試験官のギルド職員さんに注意されてしまった。けれど自分は既に終わっている事を告げたら職員さんは困惑顔だ。 「終わってる? 分からないんじゃなくて?」 「全問回答終わってます、もし良かったら確認してみてください」  そう言って回答用紙を職員に手渡したらその場で確認してくれて「全問正解だ」と、言ってもらえた。簡単すぎて逆にどこかに引っかけがあるのかと思ってもいたのだけれど、そんな事はなかったようで「君は部屋の外で待っていなさい」と早々に部屋を追い出されてしまった。 「お? 早いな、タケル。試験終わったのか?」  試験の行われていた部屋を出ると部屋の扉が見えるテーブル席に陣取ったアランとルーファウスの二人が驚いたようにこちらを見やる。 「はい、全問正解だったので外で待っているようにと言われてしまいました」 「こんな短時間で全問正解? 確かに登録試験は簡単だけど、タケルは凄いね、とても賢い」  ルーファウスがニコニコの笑みで手放しで僕を褒めてくれて、なんだか照れる。試験内容は僕の現在の見た目年齢相応な内容だったけれど、如何せん中身はおっさんだからな、子供向けの試験なんて楽勝だ。 「じゃあ後は実技試験だけだな、実技は午後からだったか?」 「はい、そうみたいです」 「だったら時間も余っている事ですし、少し昨日の復習でもしましょうか」 「でも、職員さんに部屋の外で待っているように言われたので……」 「そんなのあそこのお姉さんに場所伝えとけば大丈夫だって」  そう言ってアランがカウンターの受付嬢に二言三言声をかけると、彼女は了承してくれた様子で「午後の試験も頑張ってね」と笑顔でこちらへ手を振ってくれた。
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