第二章:怪異の犠牲者

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「当たり前だろう。山の自然だなんだということには微塵も興味はないが、オカルトのことなら話は別だ。この近辺がどういった経緯で、神隠しや消えた人間が突然現れたりする現象を伝承するようになったのか、是非とも調べてみたい」  珍しく饒舌に語る灯矢の顔は、小学校の頃に戻ったかのように生き生きとして見えた。  そう言えば、昔はこんな風に話をするのが普通だったのに、いつからこんな不愛想な男になってしまったんだろうと、ちょっとだけ感傷的な気分に浸りながら、おれは先ほど富良野さんから散歩の誘いを受けたことを話し、一緒に行かないかと灯矢へ持ちかけてみた。 「ふむ……。あのうるさい女子と一緒というのは、若干気が引ける気もするが、まぁ良いか。同行しよう」  うるさい女子というのは十中八九、倉坂さんのことだろう。 「マジ? 良かった、部屋に閉じこもってるだけじゃ退屈だもんな。それじゃあ、もう少ししたら一階の談話スペースに移動しよう。待ってれば二人もすぐ来ると思うし」
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