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どれほどの月日が流れても、消えない憎しみというものがある。
麗らかな春の日差しを見上げれば、散り始めた桜の花びらが数枚、風に舞って飛んでいくのが見えた。
穏やかな、春の午後。
皮肉なものだと、私は鼻から卑屈に汚れた息を漏らした。
どれほどの不幸や不運に飲み込まれても、世の中は平穏を気取って過ぎていく。
幸せを極めて生きる者も、ただただ平凡に生きる者も、絶望の淵を歩くように生きる者も、そして……人を殺して尚、罪を背負うことをせずにのうのうと日常を謳歌する屑たちも。
全員が、平等に今の瞬間を生きている。
忌々しい。
世の中が、私を絶望の闇に突き落とした者たちを裁いてくれないと言うのなら、私の手で直接罰を下さなくては気が済まない。
世の中が、あいつらのしでかした最低な行為を罪として認識できないと言うのなら、私がこの手で白日の下に晒さなくてはいけないのだ。
そのための準備は、整えたつもりだ。
後はあの屑たちを、残らずこの手で始末するだけ。
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