もう一人の復讐者

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もう一人の復讐者

翌日の土曜日。 今日は、斗希と二人結婚指輪を買いに行く約束をしていたけど。 「―――ごめん。 今日、仕事になって」 その言葉が嘘なのだと分かったけど、 私は、そう、と頷いた。 「ベーグルサンド作っておいたから、 今でも、昼でも好きな時に食べて」 朝、起きてリビングに行くと、斗希はそう言って、身支度を始めた。 これ以上、私と話したくないと言うように。 それは、斗希が私に対して怒っているからではないとは思う。 いや、私が川邊専務の奥さんの梢さんに、あの音声を送り付けた疑いは晴れてないから、疑心感はあるだろうけど。 なんとなく、昨日の今日で、 二人で楽しく指輪を選びに行く気分に、私も斗希もなれなくて。 仕事が嘘だとしても、そうやって言ってくれて、このマンションから出て行ってくれて、ホッとしている。 斗希は、一刻も早く外に出たいのか、身支度を整えたら、すぐに出て行った。 それが、朝の8時前で。 私は何もせず、リビングのソファーに座り、テレビを付けた。 一時間程呆然とテレビを眺めた後、本でも読もうか、と立ち上がる。 昔からそうだけど、辛い時は本の世界に入り込み現実逃避をする。 自分は、加害者だと分かっている。 だから、その辛さを受け入れないといけないと思う。 けど…。 夕べ、あの後ずっと梢さんの苦しそうな顔が頭から離れなかった。 今も、その事に追い詰められて苦しくなる。
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