悪魔の乗り物

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 柚葉は曖昧に微笑んで、窓の外を見つめた。  空は夕焼けから夜へと色を濃くしていく。  さっきまでガチャガチャのフィギュアくらい小さかったアトラクションが、元の大きさに戻りつつある。 「もうすぐ会えなくなるってわかった途端、私、すっごく後悔したの。あの時、あそこに行けばよかった。あの時、もっと話を聞いてあげればよかった。あの時、やっぱりプレゼントすればよかった。また後で、また今度って後回しにしないで、もっともっと、あの子の喜ぶことを全力ですればよかったって」  柚葉は再び柚樹に目を戻した。  濡れたような大きな瞳が、宝石みたいにキラキラ輝いている。 「でも、そうやって悔やんでも時間は戻らない。だから決めたの。この先、全力で死ぬまで生きるって」 「死ぬまで、生きる?」 「全力でね」と柚葉が付け足す。 「だから、私は落ち込んでる暇はないのよ。時間がもったいないもの」と、柚葉は決意したように笑ったのだった。
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