世界線を繋ぐ駅

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世界線を繋ぐ駅

 これは、僕が不意に日常の世界から非日常の世界へと迷い込んでしまった……そんな不思議な体験のお話です。  東京某所にA駅という駅があります。生活圏内にある駅で、通勤でも遊びに行く時でもよく使っていたのですが、その日も、まさかそんなことになるとは思う(よし)もなく、いつものように電車でその駅に到ると、特に何か思うこともなくホームへと降り立ちました。  その日は休日で、時刻はお昼少し前。買い物をしにA駅のある街へ出かけ、昼食もそこで済ます予定でした。  普段と同じように電車を降り、普段と同じように階段を上り下りして、改札口へと向かいます。  ですが、スイカ(・・・)をかざし、ゲートの開いた改札を潜った、その時でした。 「……!?」  温度というのでしょうか、臭いというのでしょうか? なんだか周りの空気がその瞬間に一変したような、そんな感覚に襲われたんです。 「……なんだ?」  なにやら街の様子も、いつも見慣れているものとはどこか違っているような気がします。  何が違うのかと訊かれたら、はっきりと具体的に答えることはできないのですが、強いて言うならば行き交う人々の服装や髪型が、どこか地味というか古めかしいというか、今のファッションにしてはどうにも違和感があるように感じるところでしょうか? 「気のせいか……」  ですが、それくらいの曖昧な違いを感じるだけでしたので、その時はただの勘違いだと結論を出して、そのまま気にせず駅前を離れることにしました。
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