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①
八千草 智草
入り婿だった父が、4人目の娘に適当につけた名前。本人は違うと言っていたが、一瞬、目が泳いだのを見逃さなかった中二の春。
(嗚呼、桜が満開で綺麗だったなぁ……)
「智草先輩、呑気に現実逃避しないでください」
声の主に、全身脱力中の私は元気いっぱい体を揺さぶらている。
いや、させろ、させろよ現実逃避くらい。
「……等々力くんは……何でそんなに……元気なの、かな?」
息も絶え絶えで尋ねると、
「そうですねぇ……強いて言えば、好き嫌いがないから、かな?」
考えたふりをして、小首を傾げる。
「……そこじゃないよ」
力なく、つっこんだ。
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