1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

 八千草 智草(やちぐさ ちぐさ)   入り婿だった父が、4人目の娘に適当につけた名前。本人は違うと言っていたが、一瞬、目が泳いだのを見逃さなかった中二の春。 (嗚呼、桜が満開で綺麗だったなぁ……) 「智草先輩、呑気に現実逃避しないでください」  声の主に、全身脱力中の私は元気いっぱい体を揺さぶらている。  いや、させろ、させろよ現実逃避くらい。 「……等々力(とどろき)くんは……何でそんなに……元気なの、かな?」  息も絶え絶えで尋ねると、 「そうですねぇ……強いて言えば、好き嫌いがないから、かな?」  考えたふりをして、小首を傾げる。 「……そこじゃないよ」  力なく、つっこんだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!